近年、全国的に公共交通の維持が課題となる中、福岡県宗像市において、自動運転バスの実証運行が実施されました。
宗像市の自由ヶ丘地区は、高度経済成長期に開発されたニュータウンで、現在の人口は約1万4500人。そのうち高齢化率は33%を超えており、住民の移動手段確保が大きな課題となっています。特に、近年のバス運転手不足や、いわゆる「2024年問題」による時間外労働規制強化の影響で、路線バスの減便が進んでいます。
こうした状況を受け、宗像市は「自家用車に頼らず暮らし続けられるまち」の実現を目指し、自動運転バスの導入に向けた実証運行を開始し、アイサンテクノロジーは本実証に高精度3D Mapの製作、車両の調律、現地での実証運営の面より参画しました。
本事業は、国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金」によるもので、当社として福岡県内では北九州市に続き2自治体目の取り組みとなりました。
実証運行の概要
今回の実証運行は、2025年2月13日から18日まで(16日を除く)の期間で行われ、自由ヶ丘地区コミュニティ・センターとJR赤間駅を結ぶ約2キロの区間を運行しました。住民が事前予約制で無料乗車できる形をとり、1日5往復が運行されました。
運行に使用されたのは、ティアフォー製のEV車両「Minibus(ミニバス)」。
本車両は、歩行者や車、信号などを検知する16台のカメラと14個のセンサーを搭載し、「自動運転レベル2」の技術で走行しました。
最高時速は35キロに設定され、運転手が常時監視しながら必要に応じて手動操作に切り替え実施できる車両設定として運行しました。
【実施体制について】
団体・組織名 | 役割 |
宗像市 | 事業全体の企画、進捗管理、成果測定等 |
西鉄バス宗像株式会社 | 自動運転車両の運行 |
A-Drive株式会社 | 自動運転バスの手配、実証項目の検証、プロジェクトマネジメント |
株式会社ティアフォー | 自動運転システムの提供、車両の調律 |
アイサンテクノロジー株式会社 | 高精度3D Mapの製作、車両の調律、現地での実証運営 |
西日本鉄道株式会社 | 交通事業者としての事業性の検証、自動運転導入による周辺路線網再編の計画検討 |
三菱商事株式会社 | 地域交通DXに係る知見の提供、MaaS連携施策検討 |
損害保険ジャパン株式会社 | リスクマネジメント 第三者評価 |
SOMPOリスクマネジメント | 第三者リスクアセスメント |
KDDI株式会社 | 通信調査 |
実証運行初日、地元住民の方々が続々とバスに乗り込み、乗り心地を確認されていました。
実際に乗車した61歳の男性は、「最初は不安がありましたが、乗ってみると普通のバスと変わらず、安定していて安心できました。路線バスの便が減り困っていたので、今後も継続してほしい」と語っていました。
また、宗像市都市再生課の宝田圭史氏は、「今回は初めての試みであり、まずは地域の皆さんに体験してもらうことが重要。今後も実証運行を繰り返しながら精度を高め、2027年度の本格運行を目指します」と述べられました。
今回の実証運行の成果を踏まえ、宗像市は2027年度までに「レベル4」(運転手が同乗せず完全自動運転)の実現を目指しています。
宗像市の内田忠治都市再生課長は、「まずは安全第一。実証運行を通じて課題を洗い出し、持続可能な公共交通の実現に向けて取り組んでいく」と力強く述べられました。
【関連情報】
福岡テレQニュース
2024年2月13日 日テレNEWS
「暮らし続けられるまちに」自動運転バスの実証実験が始まる
高齢化と運転手不足の解決なるか 福岡
https://news.ntv.co.jp/category/economy/fsb1b204752341483199406f2cd995c6c3