2025年5月より、長野県塩尻市において自動運転バスの定常運行が開始されました。本取り組みは、単発的な実証にとどまらず、地域公共交通の一翼を担う存在として、自動運転車両を「日常の移動手段」として根づかせることを目指したものです。このような形式での運行は、長野県内では初の事例となります。
当社は本プロジェクトにおいて、自動運転技術の実装支援および現地運行体制の構築支援を担当しており、技術面・運用面の両面から貢献を行っております。
定常運行概要
(1) 期 間 令和7年5月9日から 隔週「金曜日」「土曜日」
(2) 運行時刻 10時00分から16時00分まで
(3) 運行ルート core 塩尻→塩尻駅→カインズ塩尻店、デリシア塩尻東店→塩尻市役所→core塩尻(約5.5kmの循環形式)
(4) 定 員 各便13人(先着順/予約不要)
(5) 運 賃 無料
出典:塩尻市サイトより抜粋(https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/10/52688.html)
使用車両
株式会社ティアフォー製Minibus
遠隔管制室
遠隔監視・運行制御は三菱電機製の運行管制システムを用い、地域DXセンター「core塩尻」から行われました。
2025年6月21日(土)に現地で行われた定常運行の様子をレポートいたします!
今回のバスは、1周およそ5.5kmのルートを1日5便、隔週の金曜・土曜に運行しました。塩尻駅や市役所、商業施設などをつなぐこのルートは、生活に必要な拠点をカバーし、移動の選択肢として自然に組み込める設計となっています。
塩尻駅ロータリー内を走行中。停留所に接近し、ウインカーを作動させて停車動作を行う自動運転バス
現地を訪問した日は、塩尻市中心部にて開催されていた「第26回 大門マルシェ」により、会場周辺が最も賑わいを見せていた日程となりました。地域イベントと並行して行われた定常運行は、生活空間に自動運転バスが自然に溶け込む姿を象徴するような環境下での実施となり、社会実装の一歩として意義深いものであったと感じられました。
「第26回 大門マルシェ」の開催により、周辺道路は歩行者天国に。キッチンカーも多数出店し、会場周辺は賑わいを見せていました。
当日はマルシェの開催に伴い、発着/終着地点となるcore塩尻前の道路が歩行者天国のため封鎖されており、代替地点として塩尻インキュベーションプラザ前からの運行が行われました。
塩尻インキュベーションプラザ前
また、今回の定常運行においては、地域店舗との連携施策も行われていました。具体的には、カインズ塩尻店およびデリシア塩尻東店にバスを利用して立ち寄ることで、各店舗で利用可能なポイントがプレゼントされたり、スタンプラリーでノベルティがもらえるキャンペーンが実施されており、地域住民の方々が買い物の延長で自動運転を「体験」できる仕組みが設けられていました。
こうした取り組みは、単なる移動手段としての技術導入にとどまらず、自動運転を日常生活の中に自然に溶け込ませていく工夫であり、地域ぐるみで社会受容性向上に向けた事例であると感じられました。
当日は、他自治体のご関係者が情報収集を目的に来訪されるなど、現地には多くの関心が寄せられました。
また、自動運転車両をこよなく愛する地元の小さなお子様の姿も見られ、午前・午後の2回にわたって熱心にご乗車いただく様子が印象的でした。
「昨年から毎週のように欠かさず乗っている」と語るそのお子様は、試乗後に「ブレーキは手動の方が上手だと思う」と、思わず大人も唸る鋭いコメントを残してくれました。
頂いたコメントについては大切なフィードバックとして捉え、原因解析及び、対策を実施しました。
実際に乗車してみると、沿道では自動運転車両に足を止める通行人や、スマートフォンで撮影する様子が数多く見られ、地域の関心の高さがうかがえました。車窓からは、そうした日常の中に新しい技術が違和感なく入り込んでいく様子が感じられ、本実証が地域にとって身近な取り組みとして定着しつつあることを実感しました。
これまでの実証とは異なり、継続運行を通じて四季折々のデータや課題を積み重ねていくことこそが、将来的なレベル4運行への大きな一歩となります。
アイサンテクノロジーでは、これまで地図技術や自動運転の運用支援を通して、未来の「やさしい移動」の実現に取り組んできました。
地域の人々の声に耳を傾けながら、より安全に、より便利に。そして、より身近に。これからもそんな移動のあり方を、現場の一員としてつくっていけたらと考えています。
カインズ塩尻店の前の道路を走行中の様子
車両内のモニターの様子
遠隔監視施設のあるcore塩尻
遠隔監視室はガラス張りの向こう側で行われていました。
core塩尻では、自動運転バスの車内の様子がリアルタイム映像で公開され、来場者もその動きを見守ることができます。
遠隔監視画面
自動運転車両内の様子
塩尻インキュベーションプラザ前
【関連情報】
2025年7月2日(更新)塩尻市
市内中心市街地で自動運転バスの定常運行を開始します
https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/10/52688.html
2025年5月9日 日経BP総合研究所
自動運転バスの定常運行を中心市街地で開始、塩尻市
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/050803805/
2025年5月1日 讀賣新聞オンライン
自動運転バス定常運行 塩尻で県内初 9日から
https://www.yomiuri.co.jp/local/nagano/news/20250430-OYTNT50185/
2025年4月28日日本経済新聞
長野・塩尻市、自動運転バスを定常運行 駅前やスーパー巡る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC283NY0Y5A420C2000000/
【製品情報】
自動運転バス「Minibus」